失敗から学ぶ「家でのパン作り」

元パン職人が家でのパン作りのコツを解説します。

第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑨焼く(1))

完成まであと一歩。

パンを焼く作業に入ったらゴール目前ですね。

 

しかし、この完成直前の作業にも大きな落とし穴があります。

それは「焦がす」という危険因子です。

 

レシピに焼く温度と焼く時間がしっかり書いてあるでしょ?その通りに焼けば平気でしょ?

と思いきや、使っているオーブンや生地の状態によって焼き時間は大きく違ってきます。

種類やメーカーが変われば、やはり多少違いますし、同じ機種でも微妙なクセがあったりします。

 

まずは、時間を少し早目に設定して様子を見ましょう。

10分以内で焼けるパンは1,2分、それ以上であれば3~5分程度早めてチラッと確認してください。

オーブンの扉越しに見えれば良いですが、あまり見えにくく扉を開ける必要があるかと思います。

その際、オーブンの扉を開ける時間が長すぎると、オーブン内の温度が下がり過ぎてしまうので、確認は手早く行った方が良いです。

 

そして、ずいぶん早く焼き色がついてしまったり、逆に全然焼き色がつかなかったりと、あまりにもレシピと焼き時間がかけ離れてしまう場合があるかと思います。

その場合の対処方を次回お話します。

第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑧焼く前の加工)

成形で色々な形になりましたが、焼く前にもう一工夫する事で、色々なパンの表情を作る事ができます。

 

代表的なのが、といた卵をパンの表面に塗ります。

効果としては、焼き色が鮮やかにつきます。多くのパンで行われますが、注意点としては、力を入れすぎて塗ると、生地の表面ダメージを与えてしまい、綺麗に焼き色がつかなかったり、ちゃんと膨らまなかったりします。

塗りムラが無い様に、やさしく丁寧に塗ってあげてください。

 

次に紹介するのは、ハサミやナイフで切りこみを入れる作業です。

これにより、見た目にアクセントを加えたり、切った部分に具をのせたりする場所を作ります。

この作業では最初は潰れたりしそうで怖いと思います。

しかし、この作業で大事なのは、迷わず思い切りよくやる事です。

迷いがあると、手元がくるい危ないですし、切り口がガタガタになってしまうと、パンも綺麗に変身してくれません。

冷静に思い切りよく、スパッ!とやっちゃってください。

 

表面に粉をふってあげる事もあります。

ムラが無く均等に、あまり多くかけ過ぎないようにします。

この加工を化粧粉といったりします。

綺麗なパンになるようにメイクしてあげてくださいね。

 

また、焼く時に蒸気をかけて、特有の食感や焼き色を加える手法があります。

この例で代表的なのはフランスパンです。

フランスパンのパリパリとした食感や綺麗な焼き色は、この蒸気が一役かっています。

現在、この蒸気を出す機能は家庭用のオーブンでも備わっているものもあるようです。

 

それでは、一連の作業を映像で解説致します。

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第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑦最終発酵(3))

<最終発酵の大きさの見極め>

どのくらいの大きさまで発酵させればいいのか?

この最終発酵の場合は、以前の発酵の様に指をさして確認する事ができません。

この段階では、形を直す事ができないので、指の穴が残ったパンになってしまいますからね。

 

なので、最初はまず、ある程度見た目で確認しなければなりません。

そして、膨らんできたら、指で軽く押してみてください。

発酵が未熟であれば、押した部分が早く戻ってきます。

発酵しすぎていれば、押した部分から潰れていってしまいます。

最終発酵の適切な状態は、押した部分がゆっくりと戻ってきます。

適度な生地の力が残っており、焼く前の加工に耐える力と、焼いた時に膨らむ力を兼ね備えています。

 

この最終発酵の判断は、パンを焼く経験を積んでいけば、「このくらいかな」と目で見て、ある程度の判断できる感覚が備わってきます。

焦らずに、「ジャッジする少しのスリリング」も楽しんでパンを作ってみてください。

 

それでは、最終発酵について映像での解説を行います。

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第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑦最終発酵(2))

<温度と湿度>

パンは基本的に温度38℃、湿度85%の高温多湿の環境で最終発酵を行います。

この環境を家庭で維持するのは難しいので、「パンは温かくて湿度が高い場所が好きなんだ」という事を知っておき、出来るだけ温度と湿度を保つ場所を確保するようにします。

映像でご紹介しますが、お勧めは発砲スチロールの容器です。

ホームセンター等で気軽に手に入りますし、密閉性も高く、使いやすいです。

 

温度と湿度の点で注意が必要な点があります。

クロワッサンやブリオッシュ等のバターを多く使用する生地は、発酵させている時にバターが溶け出してしまうので、温度を下げた環境(30℃程度)で発酵させるようにします。

 

また、フランスパン等のように、あまり生地を捏ねない弱い生地のパンは、ゆっくり発酵させないとボリュームがでない事があります。

 

どちらも、家での環境の適切な管理は難しいと思います。

ですが、30℃を超えない環境であれば大体は大丈夫ですので、そのくらいの室温であれば乾燥に気をつけて、発酵をさせてください。

第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑦最終発酵(1))

基本的なパン作りの流れとして、パンの形を作り、もう一度発酵させてから焼きます。

この焼く前の発酵を最終発酵といいます。

この最終発酵を行う事で、パンは成形した形を保ったまま、ふっくら焼きあがります。

ここで注意が必要な点があります。

それは生地の乾燥です。

パンを作る上でどの作業でも、生地を乾燥させない事は大事になります。

ですが、この最終発酵で乾燥させてしまうと、焼いてもパンが全然膨らんでくれません。

生地は乾燥させると表面が乾いて皮ができてしまい、発酵で生地を抑が膨らむのを阻止します。

せっかくの成長期にぴったりな鎧を着せてしまうようなもので、これでは、身動きもとれずに反抗期に突入です。

生地を乾燥させないポイントは加湿保湿です。

 

<加湿>

家庭で加湿を行うにはお湯をカップにいれて、密閉出来る空間に生地と一緒にいれると湿度がある程度保たれて、生地が乾燥せずに発酵して成長してくれます。

 

<保湿>

保湿はラップで生地を覆ってあげる事で、表面の水分の蒸発を防ぐ事ができます。

ただし、そのままラップで生地の表面を覆うと、生地にくっついてしまい、はがす時傷つけてしまいます。

生地に触れるラップの面に油を塗ると、上手くはがれてくれます。

第3章  家でパンを作る9つの鍵(⑥分割、成型(2))

分割した後成型に進む前に大事な工程があるのでご紹介します。

<ベンチタイム>

切り分けた生地は、次の工程の成形に備え、形を整えて、少し休ませます。

この休ませる時間をベンチタイムと呼びます。

切り分ける為に力を加えた生地は、収縮して伸びにくくなっています。

そこで、少し時間をおいて、生地を緩ませて、形を変えやすい状態になるまで待つのです。



<成形>

ここで、切り分けた生地を、様々な形に変える事で、色々な見た目のパンが生まれます。

ここでの注意点としては、分割と同じく

必要以上に生地を傷付けない事です。

成形は好きな形に変える作業です。

ですが、思い通りの形にならないと、何度も手を加えたり、力が入ってしまったり、生地に負荷が掛かってしまう事をしがちです。

もちろん技術は大切ですが、心構えも大切になります。

パンにもなりたい形があるので、その形になるように手伝ってあげる。

そんな気持ちが伝われば、パンもうれしいと思ってくれるはずです。

それでは、分割から成形まで一連の流れを映像で解説致します。

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第3章 家でパンを作る9つの鍵(⑥分割と成型(1))

発酵した生地をそのまま焼く事はなかなかありません。

発酵した生地を、好みや食べやすさ、作業しやすさ、パンの種類等で必要な大きさに切り分けます。

これを分割といいます。

 

分割の注意点としては

・生地を必要以上に傷つけない

・切り分けた生地の重量を計量する

となります。

 

出来上がった生地は傷付きやすい繊細な子です。

生地がダメージを受けると、その部分はガスが保持できなくなり、形がいびつになったり、食感等に変化が出てきます。

しかし、腫れものを触るような感覚になる必要はありません。

大事に扱う気持ちと、生地を触る回数を少なくする事を心掛けると、生地のダメージは大分減るものです。

 

目で物を計るのはセンスと経験がいります。

○等分にする切り分け方がありますが、実際には大きくズレが生じる事があります。慣れるまでは、必要な大きさを計って切り分けた方がいいでしょう。

しかし、何度も切り分ける作業をし直すと、生地が傷付いてしまうので、できるだけ切り分ける回数は少なくした方が良いです。

次回、成型についてお話致します。